ZEN LIFE

寺生活のあれやこれや。日々の暮らし

アルトゥーロ・トスカニーニNBC交響楽団 ベートーベン交響曲3番&1番

お寺のブログのくせに何故かCDのレビューである。この夏ぐらいから、40年ぶりにCDを買い集めているせいか、ついつい書きたくなってきた。巷では最近、CDが売れず、名指揮者の演奏が全集で安く手に入る。

40年前にLPをせっせと買い集めたが、如何せん、資金不足により大量購入には至らず、当時は廉価版をちょこちょこ買い集めていた程度であったが、狭い下宿のLPプレーヤーで頑張って聴いていたあの頃のLPが、このごろは僅か数百円程度で手に入るとは、隔世の感である。このトスカニーニの全集は今年に入ってアマゾンで手に入れたが、一日に一枚ずつ聴いている。記念すべき1枚目、ベートーベンの3番&1番。この3番は1949年11月28日及び12月5日カーネギーホールでのライブ録音となっている。私のLPは1953年12月6日のスタジオ録音。随分印象が違う。録音状況が良いのか、リマスタのお陰なのか、音に奥行きがあり、「トスカニーニの音」の先入観をもって聴くと肩透かしをくらう。

 速めのテンポながら、しっかりうたって、実にメロディアスだ。特に第4楽章、流れるような展開にワクワクする。速いだけでなく、音楽が生きてるのだ。

さらに1番。これは1951年12月21日の録音。これも爽やかな第一楽章、ホルンの音離れがいい。このオケは弦が上手い。響きが明るく、ドイツのオケとは違う、明るいベートーベン。というよりトスカニーニのベートーベン。ぐいぐい迫ってくるが、少しも苦しくならない。爽やかな風のような演奏。第2楽章、これも速めでぐいぐいくる。弦が上手いのでくどくならない。速くてもセカセカしていない。ツボを押さえたリズム感、スリリングな感じが良い。むしろ心地よいのだ。よく聴くと可愛いらしいメロディが生き生きしている。第3楽章、あまりテンポを揺らさず、勢いがある。余計な力みもなく、楽しい雰囲気のある楽章だ。第4楽章、響きは硬いが、弦楽器のリズム、管楽器の強音も心地よい感じでまとまっている。最初から最後まで一筆書きのような全体のリズム感、心地よい緊張感で溢れている。

こういう演奏は現代では聴けないのかもしれない。というか、これだけの個性のある、推進力のあるベートーベンを演奏できる演奏家が果たしているのかどうか。

録音が悪いとかそういうのじゃない。この全集の価値はそういうものでは測れない。音楽家の魂を聴いてくれって思うのだ。